Between the waves  ~ 波のまにまに

いろいろな書き物を置いています

分類:書き物の大まかな分類 
概要:舞台となる年代、概要など 
年齢制限:読者の想定年齢 

風を見たものはいない  - Does anybody see the wind? -

分類:散文 
年齢制限:なし

 

 風は確かに吹いているのだろう。木々がざわめき、肌に心地よいものを感じる。空を見上げると、白い雲が透き通る青の中を流れて行き、夏はまだ、いつまでもそこにあるかのように感じられた。陸からの風を受けて、海岸に打ち寄せる波は背丈ほどのきれいな孤を描いていた。沖から絶え間無く届くうねりの中で、何人かのサーファーが波待ちをしていた。沖からのひとしきり大きなうねりにのってライトグリーンのボードのサーファーがテイクオフした。サーフボードは白い波頭を上げながら、追って来る波から逃れるように滑っていった。カールを描いた波のトップから細かな水飛沫が飛び出ている。サーファーはうまくバランスを取りながらボードを操り、何度か波のエッジへのターンを繰り返した。波は次第に小さくなり、ボードを下を潜り抜けていった。波を乗り終えたサーファーは木の棒になったかのように体の動きを止め、足から海の中に落ちていった。海の中へ潜った後再びボードの上にあがり、腹ばいになったまま両腕のパドリングで器用にボードを操り、また沖の方へと向かって行った。海岸では黄色い旗が小刻みにはためいていた。

 風は色々なものをつくりだす。だからといって、誰か風を見たものがいるかと言うと、そういった話は聞いた事がない。風の起こしたものを見て、風があることを知るだけなのだ。

  

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